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わたしの魂よ 主を賛美せよ         『PARANOIAC狂想曲』から乖離し             思う侭に往く無法地帯
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プロフィール
HN:
桐生 アキラ
性別:
非公開
自己紹介:
飼育係になりたいと切に願い、テツに憧れています。
このことにハッと気付いたあなたはすごい!!(笑)

ここ、乖離現象は『創作』やらにつかいたいと思います。
妄想という名の妄念に囚われた桐生の雑記を見てみたいという方は、探してみてください。
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ねぇ、

歌うように、

軽やかに、

私を包むように、

素敵な音色を奏で続けて。



  ◇ オルゴール ◇



「依頼をしたいんです」

世にいう名門大卒という経歴を持ちながら、卒業してすぐに便利屋を開業した刈谷恭一は事務所の入り口の前で中に入ろうとしたところを呼び止められた。黒くて長い艶やかな髪の女性だ。歳は24、5だろうか。猛暑であるにも関わらず黒い長袖のブラウスを着ている。
刈谷は「中へどうぞ」と言うと事務所に入り、依頼人へ入ってすぐにある黒い革張りのソファーに座るよう促す。事務所の奥にある台所で冷えた麦茶をコップに注ぎ、盆にのせた。依頼人に出すまでにコップには早くも水滴が浮かんでいる。
暑い。
麦茶を出しソファーに腰を掛け、じっとりと汗ばんだ額を掌で覆う。冷房のきいてない事務所内は蒸し風呂状態だった。なのに依頼人は暑さを感じないのか涼しげだ。刈谷は窓を開けるために立つと依頼人は構わず話しを続けた。

「私、村上直子と申します。依頼をお願いしたいんです」

先程と同じように言った。窓を開け戻ってきた刈谷はソファに腰をおろし、少し温くなった麦茶を口の中で味わった。
彼女は黙ったままだ。
刈谷はそっと名刺を取り出すと彼女に手渡した。

「僕は刈谷です。内容はどういったものでしょうか?いくら便利屋といっても許容範囲というものがありまして。法に触れるような事はできません。また内容によっても」
「オルゴールを」
「はい?」
「…オルゴールをなおしてほしいんです」

何を言っているのだろうか。それならちゃんとした修理屋に頼めばいいのに、何故自分のところに頼むのだろうか。刈谷は以前にもオルゴールの修理をしたことはあるがそれは依頼のついでであったり友人に頼まれたりそういう経緯であった。刈谷は返す言葉を探していた。

「できませんか?」

できますか、ではなくできませんか。少し上からものを言う言い方だった。

「勿論出来ますが。…すみません、何故修理屋に頼まないで僕の方に?あの…差し支えなければ伺ってもよろしいですか?」

刈谷は先程から気になっていた事をきいた。
するとすぐに彼女は答えた。

「他のところではなおせないんです。刈谷さんにしかなおせない…」
「すみませんが、他のところでなおせないってどういう」
「とにかくお願いします」

間髪入れずに言い負かされてしまった。
どうもすっきりしない。
しかし便利屋はそう仕事が舞い込んでくるものでもない。だからたいてい刈谷は仕事を受けなければならなかった。

「まぁ、やるだけの事はやってみますが、他でなおすことができないとのことなので僕にできるかは保証できません。それでもよろしいですか?」
「構いません、お願いします」
「それと、日程の方なのですがいつ頃がいいですか?」
「今日中…というのはできますか?」
「今日中…ですか?」
「はい」

普通は後日というのが当たり前だ。こちらの準備もあるし、仕事によっては何日も下調べしなければならないこともある。一週間前にうけた依頼の猫の迷子捜しも猫の特性から何まで調べた。

「それでは今日はオルゴールをこちらの方に持ってきていらっしゃったりは…」
「いえ、家から持ち出せなくて。私の家にきていただいて直していただいても?」
「…はい、それは勿論構いませんが」
「ありがとうございます」

持ち出せず、刈谷にしか直せないというオルゴール。刈谷は不思議と逸る気持ちを抑え書類をだした。

「それではこちらの書類に必要事項とサインお願いします」





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